スーパーや通販、そして最近人気のふるさと納税、、どこを見ても牛肉コーナーを見れば「黒毛和牛」という文字が目に入ってくるはずです。そして私たち消費者は今までの経験からなんとなーく「黒毛和牛はいい肉だ」「高いやつだ」と思っています。
しかし、実際のところそもそも黒毛和牛ってなんだ?「国産牛とは何が違うの?」「神戸牛とか松阪牛とかとは何が違うの?一緒なの?」という方も多いはず。
そこでこの記事では、そもそも黒毛和牛とはなんなのか。そして国産牛とか和牛とか神戸牛とかよくわからないとにかくよくわからない牛の事について分かりやすくお伝えします。
1st STEP 黒毛和牛は国産牛の中の1つの種類

まず最初に知っておきたいのが、日本で私たちが食べている牛肉というのは大きく海外産牛肉(輸入牛肉)と国産牛肉に分けられるという事です。
そして農林水産省が平成21年に発表している統計データによれば、日本国内に流通する食用牛のうち約43%が国産牛で、約57%が海外産牛(輸入牛)という事になっています。そうつまり、日本に流通している牛肉の半数以上が輸入された牛肉なのです。
黒毛和牛はそんな「国産牛」の中に含まれる牛肉です。

ちなみにこのデータは平成21年で今から10年近く前のデータになるのですが、昨今の日本全体における少子高齢化などにより畜産の担い手が減っていて、平成21年以降国産牛を飼育している農家の数も飼育されている牛の数も年々減少しています。参考:農林水産省「畜産統計」H27版
そして反対に牛肉の消費量はここ10数年は増加傾向にあり、「減る」という事はまずありません。
つまり何が言いたいかというと、牛肉の消費は増えているのに「国産牛」は減っている。だから、「国産牛は輸入牛に比べてどんどん需要と供給のバランスが崩れ値段が高くなっている」というのが今の現状なのです。
STEP2 国産牛は和牛とそうでない牛に分けられ、黒毛和牛は「和牛」に分類される

STEP1で黒毛和牛は国産牛の中の1つという事をお伝えしましたが、一口に国産牛といっても国産牛も色々あります。国産牛には大きく分けて2つの分類があります。それが、「和牛」と呼ばれる牛肉とそれ以外の交雑種などの牛肉で、黒毛和牛は「和牛」に分類される牛肉です。

国産牛とは?

国産牛とはその名の通り日本国内で「生産」された牛肉の事を言います。しかしポイントはこの「生産」というのが必ずしも「日本で生まれた」という意味ではない事です。
国産牛の条件を見てみると、日本での肥育期間が3ヶ月を超える牛、または日本での肥育期間が最も長くなる牛(つまり海外で生まれていても日本で育てられた期間の方が長い牛)は、全て国産牛として扱われる事になっています。
つまり、「国産牛」という括りの中には純粋に日本で生まれ育った「和牛」以外にも、例えば色々な牛の掛け合わせで作った交雑種(F1)や外国が原産地のホルスタイン種などの牛肉も含まれているのです。
そして悲しい事ですが、市場で「国産牛」と表示されて販売されている牛肉のほとんどはこの「ホルスタイン牛」か「交雑種」の牛肉です。
なぜなら「和牛」は国産牛の中に含まれますが、和牛の条件はもっと厳しく「国産」というよりも「和牛」といった方がランクが高いので、わざわざ国産牛なんてランクを下げた言い方はしないのです。
ホルスタイン牛とは?

ホルスタイン牛はほとんどの場合、牛乳を取るために飼育されている、原産国がオランダの北オランダ州および、フリースランド州、ドイツのホルスタイン地方の牛です。これらの乳牛はオスは飼育して食用にされ、牛乳が出なくなったメスも、同じように食用として出荷され「国産牛」として市場に出回ります。
交雑種とは?

交雑種(F1)はホルスタインと和牛のハーフ牛の事です。厳密にいうと、ホルスタインなどの乳牛種と和牛の交雑によって生まれた牛です。ハーフのため、肉質はホルスタインよりも良く、病気などへの耐性は和牛よりも良いという良いところどりの種類の牛です。(もちろん肉質は落ちます)※画像はイメージです。
・和牛以外の、日本国内で生産された牛
・「生産された」というのは、一番長く居た期間が日本であればOK
・流通する国産牛はほとんど「ホルスタイン」か「交雑牛」
和牛とは?

「和牛」は日本の在来種をもとに、交配を繰り返して洗練された牛の品種名であり、和牛と言えるのは和牛指定されている4品種と、4品種間の交雑種(ハーフ)のみを「和牛」と呼びます。日本国内で出生し生育されたものに限られていて、ほかの品種では和牛を名乗る事はできません。
和牛というのはこういった牛の事を指します。つまり和牛というのは生育期間がどれくらいか?とか、育てられた場所がどこか?とかは関係なく上記に当てはまらないものに限り和牛と名乗る事ができるのです。
和牛は4種類!その中の1つが黒毛和牛で約95%を占める

世界的にも高い評価を受ける和牛ですが、先ほど和牛には4つの品種があるとお伝えしました。その4つの品種というのが「黒毛和牛」「褐毛和牛」「無角和牛」「日本短角種」という日本固有の品種で、この中で我々のよく知る「黒毛和牛」が和牛の約95%を占めます。
黒毛和牛とは?

黒毛和牛とは和牛の95%を占める最も有名な和牛の1つです。黒毛和牛は、和牛の中でも特に、濃密な霜降りと、それによって口に運ぶと溶けていくような食感がもたらされ、これが他の牛肉と一線を画す黒毛和牛の特徴です。
また他の牛肉と比べて、和牛はオレイン酸と呼ばれる一価不飽和脂肪酸の割合が非常に高く、和牛には豊かで力強い風味が生まれます。
その他の和牛品種について
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褐毛(あかげ)和種 |
日本短角種 日本短角種は東北北部原産の牛で、かつては運搬用の牛として飼育されていた牛を明治時代に輸入牛と掛け合わせて作られた品種です。和牛の中で最も霜降りが少ない牛です。 |
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無角和種 無角和種は山口県で在来和牛を改良して生まれた品種です。毛色は黒毛和種よりも黒が強くなっているのが特徴です。 |
※画像は畜産zoo鑑より引用
で、和牛の何が他の牛と違うの?

じゃあそんな和牛のどんな点がホルスタイン牛などの国産牛と違うか?というと、「古くから味を求めて品種改良が繰り返されてきた洗練された牛である」という事です。また和牛にはそれぞれのブランドによって、厳格に飼育方法が決まっていて、その洗練された飼育方法もまた和牛のクオリティを高めているのです。
それによって柔らかくて臭みのない美味しい肉が生み出され、世界的にも高い評価を受けているのです。日本畜産物輸出促進協議会に掲載された、イギリスのレポートによれば和牛は下記のような言い方をされているようです。
グルメの世界において、和牛よりも贅沢なものはない。1キロ当たり500ポンドにも上るこの肉は、何が特別なのだろうか?
和牛は特別な飼料や生活様式など、豪華な環境で育てられ、飼育期間は通常よりも18ヶ月長い3年間にのぼる。和牛の飼育には手間もコストもかかるのだ。引用:日本畜産物輸出促進協議会
黒毛和牛とはつまりこういうこと
さてここまでの解説を図にまとめるとこのようになります。
牛肉は大きく「輸入牛」と「国産牛」に分かれ、その中に「和牛」とそれ以外の牛があり、和牛の中の1つの品種として「黒毛和牛」が存在しています。
神戸牛とか松阪牛とかってなんなの?

ここまでで、何となく「黒毛和牛」というものが何なのか?を分かっていただけたかと思いますが、そこで次に気になるのが「神戸牛」とか「松阪牛」といった名前の牛は何なのか?という事だと思います。
先に答えを言ってしまうと神戸牛や松阪牛というのは黒毛和牛の中にある銘柄牛(ブランド牛ともいいます)の1種です。
銘柄牛とは、全国に200種以上あり、個々の各生産者団体が独自に設ける基準を満たしたものだけが名乗れる銘柄の事。例えば日本三大和牛の1つとして知られる神戸牛の場合は以下のような基準となっていて、これを満たした場合のみ「神戸牛」として出荷する事ができる。
兵庫県産但馬牛のうち、歩留等級が「A」または「B」等級ならば「但馬牛たじまぎゅう」「但馬ビーフ」「TAJIMA BEEF」と呼称される牛肉となる。その上で以下の全ての基準を満たした牛肉は、「神戸ビーフ」「神戸肉」「神戸牛こうべうし」「神戸牛こうべぎゅう」「KOBE BEEF」との呼称を用いることもできる。
・メスでは未経産牛、オスでは去勢牛
・脂肪交雑の牛脂肪交雑基準(BMS)値No.6以上
・枝肉重量がメスでは230〜470kg、オスでは260〜470kg
・瑕疵の表示がある枝肉は、神戸肉流通推進協議会の委嘱会員の判定に依存 引用:Wikipedia
要するに、銘柄牛というのは黒毛和牛の中でも、それぞれの銘柄で定めた条件に適した牛肉のみに名付けられる「ブランド」という事です。そして見ていただいたように、ほとんどの場合、その基準というのは非常に厳格であるため「神戸牛」などのブランド牛は、その名前だけで「高級である」と認識できるようになっているという事なのです。
全国のブランド牛

全国には200以上のブランド牛がありますが、その中でも有名な銘柄をご紹介しておきます。恐らくあなたも一度は聞いた事がある名前があるはずです。(公式サイトへリンクを貼っています)
米沢牛
米沢きました!
米沢牛だよー🐂! pic.twitter.com/PbFlMYVH1k— りるめ (@rl_metal) 2018年4月29日
松阪牛
松阪牛の焼肉屋さんをハシゴ🐄
二件目の一升びん宮町店では、回転寿司みたいに肉が回転していました(。☉∆☉)
柔らかくて美味しかった〜!
サプライズでお誕生日祝いの作戦を練って下さったお店の方達も有難うございました🎂#一升びん松寿亭 #一升びん宮町店 #回転肉 #松阪牛 #お誕生日おめでとう pic.twitter.com/mrQj6iKy0I— 林涼子🍅RiKOPiN💐 (@JAPPALLA_Rico2) 2018年4月28日
飛騨牛
飛騨牛まぶし!これが、こうなって、こうじゃ! pic.twitter.com/G5jkQXpVmS
— まきそん@ホットカルピス飲みたい (@makison0116) 2018年4月28日
近江牛
近江牛❤ pic.twitter.com/3PkKMG9blw
— Uzla (@uzla3) 2018年4月29日
黒毛和牛のA5とかのランクってなんなの?

スーパーに行ったり、テレビで高いお肉が紹介されているのを見ると、よく「A5ランク最高級黒毛和牛」みたいな紹介のされ方で黒毛和牛が紹介されているかと思います。
ただ実際のところ多くの方は、「A5って何となく良さそうだけどなんなんだろう」くらいの認識しかないと思いますので、ここで簡単に黒毛和牛のランクの事を解説しておきたいと思います。
牛肉のランク付けは社団法人 日本食肉格付協会の基準によるもの

まず、そもそも牛肉のランクって誰が決めているんだろう?という事を知っていただきたいのですが、これは社団法人 日本食肉格付協会というところが基準を決定しています。
基準はA〜Cの基準と1〜5の基準で決まる
よく私たちが耳にするのは「A5ランク」という言葉ばかりなのでこの事を知らないのですが、実はA5というのはA〜Cの中のAと、1〜5の中の5の評価2つを掛け合わせたものだったのです。
A〜Cは歩留等級
A〜Cは「歩留等級」といって、要するに1頭の牛からどれだけ肉が取れるかでランク付けしています。簡単に言うと肉がたくさんとれる牛は「優秀」という事でA、普通レベルの量が取れる場合はB、普通よりも取れない場合はCとなります。
等級 | 評価基準 |
---|---|
A | 食べられる肉が平均より多い |
B | 食べられる肉が平均レベル |
C | 食べられる肉が平均より少ない |
歩留まり等級という指標は、本来業者さんが使う指標のため、肉の希少性などは関係なく、単純に同じ重さの塊からどれだけ食べられる部分が多いのか?という点でのみ語られます。
→つまりA〜Cというのは、基本的に肉の美味しさにはあまり関係ない。
1〜5が肉質等級(つまり品質のこと)
そして等級を表すもう1つの指標が「1〜5」の数字ですが、この数字は簡単に言うと肉の質そのものを表します。すなわち我々消費者にとっては、この数字の方がより関係するのです。
肉の質を評価する「肉質等級」ですが、これは以下の4つの指標から評価されます。
✔︎脂肪交雑
✔︎肉の光沢
✔︎肉の締まり及びきめ
✔︎脂肪の色沢と質
この4つの指標をそれぞれ「1→ダメ」「2→微妙」「3→普通」「4→まあ良い」「5→とても良い」という形で5段階評価を付けていきます。
つまりA5ランクは業者にとって良い肉=A、お客にとって良い肉=5という双方にとって良い肉である。という事

結局のところ、一番知っていただきたいことはこの事実です。というのも先ほどご説明したようにお肉のランク付けにおけるABCというのは、業者さんが見る指標であり消費者である我々にとっては、AでもBでも特に関係ありません。
そして重要なのは肉の質を示す「1〜5」の指標です。ただこれも先ほどお伝えした通り、質の良さというのが「霜降り具合」によって左右されるため、例えば少し脂が少なめの方がいいという人にとっては必ずしも「5」の等級が付いた肉が良い肉とは限りません。
じゃあなぜA5ランクという言葉が一人歩きするように使われているかと言うと、結局のところ誰が聞いても「良い肉」に聞こえるし、そしてそれは間違ってはいないからです。
黒毛和牛の値段は?
最後に気になる値段ですが、これは肉の部位やブランド、そして等級によって大きく異なるため一概には言う事ができません。例えば楽天市場を見てみると「鹿児島産黒毛和牛ロース500g」は4,480円という価格でしたが、神戸牛は400gで11,800円でした。

このように部位やブランドによって異なるのが実情です。ただ、目安として国産牛>黒毛和牛>ブランド牛の順番で値段が高くなっていますので、参考にしていただければと思います。
まとめ

今回はスーパーなどで日常よく目にする「黒毛和牛」について、その実態をお伝えしました。普段なんとなーく「黒毛和牛っていい肉なんだ」と思っていた方も多いと思いますが、実際に黒毛和牛はいい肉だと言う事が分かっていただけたかと思います。
ただ、この記事の説明を読んでいただくと「黒毛和牛は黒毛和牛でも様々な黒毛和牛がある」という事も同時に理解いただけたかと思います。
黒毛和牛の中でもブランド牛と呼ばれる牛肉は、それぞれのブランドの基準に則って飼育されていて、例えば食べ物はその産地のお米だけを食べさせたり、さつまいもだけを食べさせたりといった、それぞれのブランドならではのこだわりを持って育成されています。
そのため、単純に値段だけで肉の旨さが変わるという訳ではないのも黒毛和牛の面白さの1つです。例えば神戸牛がいいという人もいれば飛騨牛がいいという人もいます。それは単純な値段の問題ではなく、好みの問題なのです。
そんな感じで、黒毛和牛はブランドが200以上あるため、少なくとも200通りの楽しみ方ができるのが黒毛和牛の面白さとなっています。
黒毛和牛を食べてみたいならふるさと納税がオススメ

今回ご紹介したように黒毛和牛の銘柄はなんと200以上もあるのですが、「試しに食べてみたいな」と思っても実際はなかなか値段が高くて手が出せないという方も多いかもしれません。そんな時にオススメなのが「ふるさと納税」を利用して黒毛和牛を食べ比べしてみる事です。
というのもふるさと納税の返礼品の中でダントツで人気なのが「肉」の返礼品で、各自治体が多数の種類の肉の返礼品を用意してくれています。もちろん黒毛和牛もたくさんあります。
ふるさと納税を利用すれば、実質たったの2,000円で各産地の黒毛和牛(銘柄牛)を食べる事ができるので、もし「黒毛和牛がきになるけど、手が出しにくいな」という方は、ぜひふるさと納税で黒毛和牛を食べてみてください。
すこしだけ、私がオススメするふるさと納税の黒毛和牛を掲載しておきますので参考にしてください。
